中学受験をするなら、大学の合格実績が高い学校に通わせたい──。
そう考えるご家庭は多いと思いますが、進学実績の高い学校ほど入試の難易度も高く、合格は簡単ではありません。
しかし、中学受験の世界では、入学時の難易度はそれほど高くないのに、大学の合格実績が高い「お得な学校」というのが存在します。
中学受験の経験者が周囲にいなかった私は、週刊東洋経済の「入学から卒業までの学力伸長度ランキング」の特集を読んで、当初はその存在に驚きました──。

しかし、実際に中学受験に取り組む中で、この「お得な学校」という考え方には、いくつかの誤解が含まれていることがわかってきました──。


入学偏差値と卒業偏差値、その仕組みを理解する
よく話題となるのが「入学偏差値」と「卒業偏差値」の差です。
たとえば「入学偏差値45だったのに、卒業時には偏差値65相当の大学に合格!」といった具合に、偏差値20アップをアピールする学校も少なくありません。
しかし、ここにはカラクリがあります。
母集団がそもそも違う
中学受験の偏差値は、受験する時点で既に学力上位層が集まっているため、母集団がかなり限定されています。
そもそも中学受験に挑むだけでも、一定以上の学力がある層と言えます。
一方、大学受験は進学率が50%を超えた今、受験者の母集団そのものが大きく広がっています。
以前は親世代(就職氷河期世代)で進学率が25%前後でしたが、現在は進学希望者が増加しており、学力層の幅も広がっています。
偏差値は「同じ集団内で自分がどの位置にいるか」を示す指標です。
そのため、同じ学力でも、集団の平均レベルによって偏差値の数値は大きく変わります。



確かに、下の図を見ると中学受験で偏差値40だった学力でも、大学受験では偏差値50以上には見えるわね。





つまり、“入学時”と“卒業時”の偏差値を単純比較しても、あまり意味はないと思います。
成績が「本当に伸びた」わけではない場合も
「入りやすいのに実績が良い」とされる私立一貫校の中には、進学実績を作っている生徒層と、ボーダーで入学してくる層がまったく別であるケースも少なくありません。
難関大学の進学実績は、
- 体調不良や受験当日の失敗で第一希望を逃した層
- 特待生制度で優秀層を確保している学校
などによって支えられていることがあるからです。
たとえば、適性検査型のテストを用意している私立中学校では、公立中高一貫校に届かなかった優秀層をターゲットにしていると考えられます。
また授業料免除などの特待制度を用意して、優秀層の取り込みをおこなっている学校も多いと思います。



我が家の場合、幸い都立中高一貫校に合格しましたが、併願した私立(偏差値40台で特待合格、偏差値50台で一般合格)については、都立に落ちていたら、どちらを選ぶかは迷っていました──。
こうして集められた優秀層が「特進クラス」に集中し、進学実績を作り出しているケースがあるのです。
学力の伸びる時期は人それぞれ
とはいえ、中学受験でボーダー入学(一般入学)だったからといって悲観する必要はありません。
スポーツや勉強でも人によって伸びるタイミングは異なります。
それまで積み重ねてきた学びが、ある瞬間に「線」として繋がり、一気に伸び始める子も少なくないと考えています。
大切なのは、どの学校に進学しても、コツコツと努力を積み重ねる姿勢です。



努力の積み重ねは、必ずどこかで花開きます。
努力の積み重ねは、必ずどこかで花開きます。
努力の積み重ねは、必ずどこかで花開きます。



わかったから、どっか行けよ!
まとめ:偏差値に振り回されないために
「入学偏差値と卒業偏差値の差」をアピールする学校は多いですが、それだけで「お得」と判断するのは早計だと思います。
まずは、実際に学校の雰囲気や指導方針を自分の目で確認してみましょう。
たとえば、
- 学校説明会に参加
- 可能であれば授業を見学
- 文化祭などの行事に参加(見学)
といった機会を活用し、生徒や先生の様子、学校の雰囲気を観察してみてください。
たとえ第1志望に入学できたとしても、勉強しなければ成績は伸びまぜん。
そのため、お子様がストレスなく通える、お子様にあった学校を見つけるのが一番ではないかと思います。

